第159章

大島莉理は久しぶりに公館へ戻った。離婚を決めてから、一度も足を踏み入れていない。いま目の前にあるはずの家が、なぜだか他人の家みたいに感じられた。

暗証番号式の鍵に指を伸ばし、いつもの番号を押す。カチリ、と解錠音。

誕生日のままだ。

大島莉理は扉を押し開けた。リビングはがらんとしていて、使用人の姿すらない。そのまま階段を上がる。自分の部屋へは向かわず、足は書斎へと吸い寄せられた。

田中尚哉の書斎。家の者であっても近づくことを許されない場所だ。使用人も掃除のときはここだけ避ける。会社の機密が山ほどあるから。

――昔は、莉理だけが自由に出入りできた。

彼女以外は絶対に入れない。尚哉が不...

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